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大国林道

執筆者:

写真:嘉納辰彦

沖縄本島北部、大宜味おおぎみ村から国頭くにがみ村にいたるヤンバル山地の脊梁部を切り裂くように、1977年度から17年の歳月と総事業費50億円にも及ぶ巨費を投じて開設せしめられた全長35・5キロの多目的広域林道。
 大宜味村から国頭村にかけての林道であることから「大国林道」の名称を持つ。

林道工事に着手した1977年から80年中期まで、多くの県民や自然保護団体は、ダム建設などに何の疑念を持つでもなく、その当時行われていた凄まじい伐採など、林業が及ぼすヤンバルの森の破壊から、ヤンバル固有のノグチゲラなどの貴重な野生生物をどう守るか?ということのみに目を奪われていた。
 大国林道は、その隙をつくように建設が進められ、多くの県民や自然保護団体が事の重大さに気がついたときには、すでに、その90%が完成していたという、いわくがオマケに付く自然破壊の権化たるアスファルト舗装のチョ~立派な林道。

そして、この事は多くの環境経済学の研究者も指摘するところだが、広域林道とか多目的林道と言うのが、本音のところで何を目的とし、あれだけの歳月と巨費を投じて建設をしたのかが未だに良くわからない。
 一部お役人の口から漏れ聞かされたところによると、大国林道などヤンバル地域での林道の開設は、沖縄の未来を左右する(お役人による発言)?ダム建設と大きな関わりを持たされているようであるが、さて、あなたは、水を「湯水のごとく」ふんだんに使う生活と、みどり豊かな森の存在と、それに付随する限りない生産の場であるべき母なる海の存在のどちらに本当の豊かさを感じ取れますか?

それにしても、自然破壊の権化たる大国林道が、安易な開発が環境に与える影響を教える環境教育の格好の現場を提供し、自然環境に配慮した工法とされる急傾斜の法面切が、いま尚、大雨のたびに崩落を繰り返し、その修復には、毎年1億円プラスの工事費がつぎ込まれるなど、このところの自然保護運動の大きなキーワードにもなっている「持続可能な事業の創設」を地で行っていることはなんとも皮肉な現象である。