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ブクブクー茶

執筆者:

写真:垂見健吾

茶碗から盛り上がった豊かな泡、煎り米の芳しい香り、サラサラサラという快い茶筅の音、道具の大きさ等、一種独特の風情があり、いかにも沖縄的なおおらかさがあります。立て方や飲み方の作法等は一切なく、親しい人同士楽しく談笑しながらくつろぎを求める、うちとけた和やかさのあるお茶です。ほっぺたや鼻についた白い泡、飲んだ後に出るゲップも座興の感さえあります。「茶道」に見られる形式や家元制などもありません。縦より横の関係を重視した沖縄社会を表現しているブクブクー茶は沖縄の心だと思います。
 明治、大正、昭和初期に那覇の家庭で、特に女性に好まれ、家族の誕生日、旅立ちの祝い、内輪の祝いなどに頻繁に飲まれていました。東町の市場では、露店の雑踏の中をチリデー(大きなお盆)に茶碗に盛ったブクブクー茶を10数個入れて売り歩く姿も見られました。戦後まったく姿を消していましたが近年、復活しています。

ブクブクー茶の立て方は、きつね色に煎った米を15分位煮て煎り米湯を作ります。支那茶と番茶をブレンドして茶湯を作ります。大きな木鉢(ブクブクー皿)に煎り米湯と茶湯を1対2の割合で入れ、大きな茶筅でサラサラサラと泡立てます。15分位茶筅を振り続けると1時間たっても消えない真っ白いきめ細かな固い泡が出来ます。昔のような豊かな泡を立てる秘訣は、沖縄ならではの石灰質をつたって得られるカルシウムやマグネシウムを豊富に含む硬度の高い水を使うことです。茶碗に小さじ1杯位の赤飯を入れ、別に入れたお茶を注ぎその上に十分に立った泡を茶筅でこんもりとソフトクリームのように盛り、その上に刻んだピーナッツを振りかけます。飲み方は箸やスプーンなど使わず、大きく口を開き泡をかむようにしながらふわっと吸い込みます。茶碗の中のお茶を早く飲んでしまうと泡が残ることがあります。泡があるところに飲み口をまわしたり、茶碗をトントンとたたいて泡を動かすこともあります。

ブクブクー茶は「幻のお茶」とまで言われ、沖縄でもそれがどんなものであるかを知らない人がたくさんいます。私たち「沖縄伝統ブクブクー茶保存会」は、昔のブクブクー茶を知っている人たちが納得出来るすばらしいブクブクー茶を大切に守り、那覇をはじめ沖縄の文化として再び定着することを願って保存、普及活動をしています。
 ビデオ「沖縄の心ブクブクー」(3500円)は「沖縄伝統ブクブクー茶保存会」制作で、ブクブクー茶の立て方、飲み方などが一目で分かります。また『ブクブクー茶』(ニライ社発行)の著者である安次富順子さんはこつこつと文献を集め、各地の水質の分析をやり直し、やっとブクブクー茶本来の姿を復活させた功労者の御一人です。