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ちむ

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肝、である。しかし沖縄で「ちむ」という場合、それは単なる内臓ではない。実は「心」を意味しているのだ。

「ちむぐりさん」  心苦しい、かわいそう、同情する。

「ちむどんどん」  胸わくわくする。

「ちむわさわさー」 胸騒ぎする。

「ちむがなさ」   心の底から愛しい。

とまあ、ちむに関する言葉はどれも深く感情の揺さぶる様子を表しているわけだ。心の動きというものは、脳だけで作られているわけではないことは、最近の西洋医学の研究でも言われていることだが、この「ちむ」という言葉を考えれば、まったくそのとおりだと思う。内臓感覚で物事を感じているわけだ。

有名な沖縄の民謡「てぃんさぐ1ぬ花」では、「てぃんさぐぬ花や ちみさきに染みてぃ 親ぬゆしぐとぅや ちむに染みり」(てぃんさぐの花は爪先に染めるが、親の教えはちむに染める)と謡われている。肝に銘じるということだが、「ちむに染みり」という言葉のニュアンスの方が、より深く親の言葉を理解できるような気がする。

こういう感覚が最近の子供たちの間にも受け継がれているのかどうか、新うちなーぐちとして子供たちの間で使われているのが、「ちむい」だ。意味は、「かわいそう」である。つまり「ちむぐりさん」に非常に近い使われ方をされている。

「えー、かずひろよー、宿題忘れて先生に怒られているよー。でーじちむい」という風に使われる。「ちむぐりさん」から「ちむい」へと言葉は変化しているのだが、沖縄のちむぐくるは、受け継がれていってほしいものだ。「肝心」、うーん、これは「真心」ですね。

【編集部注】

  1. 「てぃんさぐ」はホウセンカの沖縄方言