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オオコウモリ

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僕がオオコウモリを知ったのは、『南大東島自然ガイドブック オオコウモリと水辺の島を歩く』という自費出版の本を編集したからだ。著者の大沢夕志・大沢啓子夫妻は、「88年の暮れに南大東島を初めて訪れ、オオコウモリや南の島の魅力に引きつけられる。南大東島以外にも琉球列島や小笠原の島々やロタ島でオオコウモリを観察している。」(同書あとがきより)という二人で、はっきりいって、オオコウモリにハマりまくっている。なんせこの本以外にも「オオコウモリの飛ぶ島 南の島の生きもの紀行」という本までだしているのだ。さらに「オオコウモリの世界へようこそ」というホームページまで立ち上げている。ハンパじゃないのだ。編集作業を進めているうちに大沢ワールドに巻き込まれた僕は、いつの間にか、あのかわいいオオコウモリに魅せられていたのである。

そう「オオコウモリ」は可愛いのだ。普通コウモリというと、吸血だとか、洞窟だとか、黄金バットだとか、あまりいいイメージをもたれていないが、「オオコウモリ」は「フライング・フォックス」と呼ばれるだけあって、顔だけみれば子ギツネや子犬系の可愛いお顔なのである。他のコウモリは顔に超音波を送受信する器官がついていて、けっこう顔立ちが恐いのだが、オオコウモリは、超音波を出さないので、顔立ちがくずれていない。さらに彼らは、シマグワやイヌビワやガジマルやトックリキワタなどの果実を食べる。ちょっとおしゃれな「フルーツ・バット」なのだ。実をクチャクチャして、その食べかす、ペリットを吐き出す。彼らの姿を見たければ、まず昼間木の下に落ちているペリットを見つけることだ。それに洞窟にも住んでいない。昼間はどこぞの木の下でぶら下がって眠っていて、夜になると、果実を食べに空を舞う。
 そのふわっと羽を広げ飛ぶ姿は、ハッとするくらいかっこいい。けっこう大きいので目立つハズなのだが、一般の人は夜、上を向いて歩くということもしないし、またその姿を見ても、それがまさかオオコウモリだとは知らないので、「ラッキー」と興奮するのは、僕と3歳の娘くらいなもんだ(彼女は、ペリット探しの名人である)。もちろん大沢夫妻も。僕の住んでいる那覇首里しゅりでもその姿は割と頻繁に見ることが出来る。夜になると、どこからか「キャッキャッキャー、キャ」というオオコウモリの楽しそうな声が聞こえてくると、家族揃ってその木を探しに行くこともしばしばである(家族3人、オオコウモリファンなのだ)。ウチの近所は、オオコウモリが好きな木がたくさんあるのだ。彼らは、美味しい木の実を食べていると、楽しくなってつい「キャッキュキャー」と大きな声を上げてしまう。その楽しげな姿は、今度生まれてくる時は、オオコウモリの家族になろうと思うほどである。
 那覇市で出会える、もっとも大きい野生の哺乳類である彼らと出会えて、うちら家族のナイト・ライフは、より一層充実することとなった。みなさんも、夜、上を向いて歩くことをお勧めします。