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離婚率全国一・失業率

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沖縄の公式統計ほどあてにならないものはない。

98年末の失業率8・3%、これは内地の二倍。基地依存型経済から脱しきれない体質に、不況の直撃である。知事選で経済振興策を訴えた稲嶺恵一さんに、有権者の心が動いたのも無理はない。沖縄は基地撤去かそれとも基地と引き換えの経済復興か、に揺れてきた。とはいえ、この原稿を最初に書いたのは四半世紀前。直近の2021年の失業率1は3・7%、あいかわらず全国一位だが、基地依存経済はすでに過去のものになった。沖縄経済は基地がなくてもやっていけるが、コロナ禍で目玉の観光業が大打撃を受けたせいだ。

同じく、97年の女性の有業率44%は、全国平均50・4%より低い。沖縄じゃ、女は働き者でとおっているのに、これでは専業主婦率ダントツの神奈川県みたいじゃないだろうか?沖縄の女は働かないでトウチャンの稼ぎで喰ってるのだろうか?わたしの知るかぎり、そんな女にお目にかかったことはめったにない。2019年の女性の労働力率は54・9%と全国平均の53・3%より高い。沖縄の女は働き者なのだ。なのに15-64歳の生産年齢人口では全国平均が72・6%なのに対して沖縄は70・3%、しかも短時間就労など非正規労働が圧倒的に多い。沖縄の女は働いているが、不利な働きをさせられているのだ。

それだけではない。沖縄の女は統計に現れない働き方をしていることも多い。統計や税務署がつかめないシャドウ・エコノミーの領域で。いちばんの領域が、飲食業や風俗産業の分野だ。日銭稼ぎで現金収入。トウチャンが失業していても、そしてシングルマザーでも、カアチャンの稼ぎでなんとか喰っていける。カラダを張って稼いだお金を、お上に届ける必要なんてあるもんか。もうひとつの例がユタ業。「男の女郎買い、女のユタ買い」といわれる「癒し」産業。保険も効かないこの影の領域で、いったいどれだけの人数がユタに従事しているのか、いくらのお金が動いているのか、つかんだ人はいない。

お国が自分を守ってくれず、男もあてにならないところでは、女は強くならざるをえない。その結果が離婚率の上昇である。日本全国都道府県別のデータによれば、沖縄と北海道は離婚率のトップを競い合う。ただし、背景はまったく対照的である。北海道では親族ネットワークの圧力が弱いためにかんたんに離婚できるのに対して、沖縄では、女系親族のネットワークが離婚した女を支えてくれる。沖縄は、トートーメー継承問題に見られるように、一見、父系親族が強いようにみえるが、ほんとは地縁・血縁ネットワークを仕切っているのは女の力だ。北海道は公共事業依存体質の強いところ。男がお上のご意向や不況に翻弄されるのに対し、沖縄では女は男をあてにしない生活をつくりあげている。だが近年の傾向は、この女系親族ネットワークも機能しなくなって、女性が孤立しがちなことだ。若年女性の妊娠、出産はあいかわらず、大きな問題だ。

だが離婚率全国一は、ちっとも恥ずかしい数字なんかじゃない。離婚の原因にはDVや虐待がある。近年の離婚の傾向は、子どもがいることも、子どもが小さいことも、離婚の抑止力にならなくなったことだ。女は貧乏でも、苦しくても、横暴な夫から逃げだす。女4はガマンしなくなった。離婚の自由があることは、ないことよりもずっとまし。離婚率の低さは女のガマン、の指標かもしれないのだ。その結果、沖縄にはシングルマザー世帯がたくさん生まれているが、問題はシンママことシングルマザーに支援の手が届かないこと。コロナ禍で「子どもの貧困」を救うための「子ども食堂」が全国に展開しているが、子どもが貧乏なのは親が貧乏だからに決まっている。「子どものため」を唱えるなら、まずシングルマザー支援を、と言いたい。

【編集部注】

  1. 失業率のデータは、『琉球新報』2022・2・2付より