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ヨナグニサン

執筆者:

写真:嘉納辰彦

世界最大の蛾、与那国よなぐに島に産する。初めはそれだけの知識しかなかったので、西表いりおもて島で実物に出会った時は、大発見をしたように驚いた。名前から勝手に与那国特産だと思っていたのだ。

ある夜、定宿にしていた民宿の男の子が、手の先になにか大きなものをつけてやって来た。ゆっくりと呼吸するように動いている。子供の掌は全く見えない。当時、土産物屋の店先に標本ケースに入れられ売られていたとそっくりだった。「それ、ヨナグニサンによく似てるね」「そうさぁ」「えっ」「これ、そうさぁ」「西表にもいるの」「時々、あかりに飛んでくるよ、少なくなって来たけど」。

それをキッカケに調べてみると、日本では与那国が多産地だが、石垣、西表にも産し、同類が台湾から東南アジア、ヒマラヤ、インドまで広く分布しているという。それぞれの亜種の差は研究がすすんでいないようなので、とりあえず与那国産が世界最大と称しても構わないようだ。最近、乱獲がたたったのか、保護がすすんだのか、土産用の標本も繭で作った小銭入れもほとんど見かけなくなってしまった。蛾が嫌いな僕にも、堂々としてなかなか美しくみえたものだ。