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オバァ・アンマァ・ネーネー

執筆者:

写真:垂見健吾

沖縄の女は強い。古代からの母系社会の伝統なのか、離婚率の高さ、「未婚の母」率の高さ、共に日本一である。強いのは口先ではなく、生きて行く力が強いと言うことで、亭主と別れようが子供を抱えようが、逞しく笑いながらガンガン働き、その上世界有数の長寿1地域なもんだから、やたらに長生きまでするのである。沖縄の働く女たちの間では、亭主ひとり満足に養えない女は軽蔑されると言う。当然、男は頭が上がらない。

「オバァ」とは、本土でいう「おばあさん」だが、沖縄では独特のニュアンスを込める。オバァは敬われているのである。酒場で誰かが「オバァこそが沖縄そのものではないか」なんて言い出すと、皆一様にうなずき、涙ぐむ奴までいるのだ。オバァは善なる者であり、神に近い者であり、沖縄のシンボルなのであった。

現存するオバァたちは、あの沖縄戦から米軍支配時代を生き抜いてきた女たちである。沖縄に初めて行ったとき、コザのバス停で洋モクをふかしているサングラス姿のばあちゃんに会った。派手なムームーを着ていて、惚れぼれするほど格好良い。年を聞いたら、ヒヒヒと笑って96歳と言うではないか。誠に「オバァ」の底力は侮れない。

「アンマァ」は「お母さん」だが、もう死語に近く、沖縄芝居で聞くぐらいだ。今は「母ちゃん」が最も使われているのではないか。

「ネーネー」は「お姉さん」で、こちらはよく使う(「お兄さん」は「ニーニー」)。ネーネーもアンマァも所詮はオバァヘのワンステップ。沖縄では女の盛りは70過ぎから始まるのである(本当かね)。

ウフフフなんて笑うあの可愛らしいネーネーも、やがて逞しくケラケラ笑うアンマァになり、最後はオバァと化す。今日も沖縄の上空には、島を守り続けるオバァたちの笑い声が、ヒヒヒヒと響いていることであろう。

【編集部注】

  1. 沖縄県の女性の平均寿命は2005年まで全国1位、その後3位、7位と後退している。