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ハーリー

執筆者:

石垣島ハーリー

旧暦の5月4日1に沖縄のいろんな場所で開かれる海のお祭りで行われる、船を使ったレース。糸満ではハーレーとよばれている。与那国よなぐに島の場合、3つの村同士が競い合う。祭りと言っても勝ち負けを争うだけに、時にはシリアスな状況に陥ることもよくあり、1989年の祭りでは、レースの判定をめぐって村同士が対立し、一時は祭りが中断するかしないかという事態になったこともある。

僕は沖縄の季節の中で、このころが好きでたまらない。もっとも僕が沖縄を語る時の「沖縄」は沖縄本島ではなく、八重山であるが。

八重山では梅雨が明けると、強い太陽の光がだれに邪魔されることなく地上に降り注いでくる。湿った空気を含んだ綿みたいな雲が突然消え、高くて広い空が頭の上に現れる。このころは、草木はもちろんのこと、牛も山羊も人間も、生命あるすべてのものが光を浴びることを喜んでいるように僕には思える。

僕は今までに3回ほど爬竜船(ハーリーせん)を漕いだことがある。スタートして20メートルぐらいはなんとかみんなのリズムに合わせてかいを漕ぐことはできるのだが、その先は前や後ろで漕いでいる人の櫂にぶつけるわ、漕いでいるはずが水かきみたいになって櫂で水を船の中にわざわざ汲みこんでしまったりと、実に不様な漕ぎ手だ。しかし銅鑼どらや太鼓の音の中で漕いでいると、いっちょまえのウミンチュになった気になるから困ったものだ。

前日までボーボー髪だった島のおばさんたちがきれいにパーマをかけたり、見物客のおじいたちが糊のきいたシャツを着て、しかもきれいに磨いた靴を履いたりしている姿を見ると、祭りが島の人たちにとって、とても大切なハレの場だということがよく伝わってくる。ハーリーに限ったことではないが、島では祭りを機軸にして1年間のリズムができあがっている。

【編集部注】

  1. 那覇ハーリーは、ゴールデンウィークの5月3日~5日に行われている。