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てんぷらー

執筆者:

写真:垂見健吾

中学生の頃、帰り道によく買い食いしたモノがあります。アルミホイルに包まれた小麦色のあげもの。さて何でしょう? 何と、「てんぷら」です。てんぷらがおやつ? と聞きなれない内地の方は首をかしげるかもしれませんね。でも、沖縄で小中学校を卒業した人なら十中八九、「自分もそうだった!」と思うはずです。

何故か、小・中学校のまわりには、食堂店がよくありました。食堂というにはメニューはそろってないのですが。そして、私の中学校のまわりには、パーラーと呼ばれる中学生でにぎわっている場所が3軒ありました。パーラーときくと、フルーツってとこが普通かもしれませんが、私の思い出のパーラーはすべててんぷらーにつながります。今考えると変ですが、中学校までは不思議とすら思わない程、てんぷらーはパーラーで売ってるモノなのだと思っていました。それはさておき、てんぷらーですが、値段は1コ30円~50円ぐらいだったと思います。制服のポケットに小銭をじゃらじゃらさせてたあの頃、3個以上買える日はとてもゼイタクな気分になったものです。店の中で食べる時でも、ほとんどお箸を使わなかった気がします。私たちのおやつだったてんぷらーは、お箸を使っていただく程、気取ったものではなく、形も、小麦粉の衣ででっぷり太っているものです。内地風の上品なてんぷらとの一番の違いではないでしょうか。そして大抵の場合、しっかりと味がついていますが、それでもみんなその上にソースをかけて食べます。てんぷらーにソースという組み合わせは、てんぷらー・パーラー以上に意外かもしれませんが、厚い衣には本当によくあいます。具は、魚、イモ、野菜、イカ、ソーセージなどなど。私のお気に入りは魚と野菜。白身魚が特にお気に入りでした。

学校の帰り道、パーラーによって、魚てんぷらーを2個。おばちゃんが、「ソースかけるねー?」とサービスして聞いてくれるのを、「一個だけかけてー。もう一個はそのままでいいよー」といって、少しだけ味の違うてんぷらーをハフハフと食べながら歩いたものです。東京で生活し、「てんや」とかファーストフード感覚のてんぷらやに行っても、やっぱり違うなぁと思ってしまいます。歩きながら手づかみで食べられる。天つゆではなくソース、またはそのままでもおいしい。それが私のてんぷらーです。ハンバーガーよりももっとあったかくって沖縄らしい。私の初めてのファーストフードがてんぷらーだった、という感じです。(あー食べたくなってきたなぁ)1

【編集部注】

  1. その後、もちもちっとした食感が人気のもずくてんぷらが登場。2023年現在、値段は一個70円程度。