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チデークニ

執筆者:

写真:嘉納辰彦

方言でチは黄、デークニは大根なので黄大根となるが、実は大根ではなく人参の名称である。時に黄人参と表記されることもある。

もともと沖縄在来の人参は黄色く細長いもの(東洋型琉球人参)で、戦前はこの種の人参だけだったようである。チデークニはこの種の人参に付けられた名前であったと思われる。時代とともに赤い人参(西洋型人参)も出回るようになり、今では在来のものを指す場合と、人参の総称として使われる場合とがある。

人参の総称として使うようになった関係で、最近は、黄色く細長い人参を島人参と呼ぶようになっている。島人参もいいけれど、チデークニは黄と言っているので、在来の黄色い人参だけをチデークニ、赤いのは人参と呼んで区別したいものである。

チデークニは黄色い色もさることながら、柔らかく、香りが良いのが特徴で、中城なかぐすく村、那覇市小禄おろく、糸満市などで栽培され、12月から3月にかけて市場に出回る。

最近野菜の多くに季節がなくなってきている。夏野菜だったゴーヤーやナーベーラーが冬でも手に入るようになった今、チデークニに季節を感じるのはとても嬉しい。

寒い冬、ちょっと風邪っぽい時など、牛肉とチデークニでおつゆを作る。フーフーいいながら食べると体が温まり、風邪がふっ飛んでしまう。医食同源の思想の入った美味しいおつゆである。1

【編集部注】

  1. 2018年、中城村は12月12日を「島ニンジンの日」に制定した。2022年現在、主なチデークニの産地は中城村を筆頭に糸満市、渡名喜村。