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ムーチー

執筆者:

写真:垂見健吾

沖縄の餅は、もともと糯米もちごめを水を加えつつ石臼でくか、水に浸しておいた糯米をくかした後、蒸しあげたものが中心だが、近年は糯米粉を水で練って作るのが普通。そんな餅の中でも、旧暦12月8日に作るのが鬼餅(ムーチー)。練った糯米粉を平たくのばし、細長い長方形をつくってサンニン(月桃ゲットウ)やクバ(蒲葵ビロウ)の葉で包んで蒸す。特に、香りのよいサンニンで包んだものは人気があり、今では街の菓子屋で一年中買える。黒砂糖味のものもある。

鬼餅には厄払いの意味があり、仏壇、かまど、神棚などに供え、家族一同、特に子供の健康を願う。

その昔、首里しゅり金城かなぐしくに兄と妹が住んでいたが、兄が大里に移ってから人を喰う鬼となった。妹は兄が首里を訪ねて来た時、それを退治するため鉄餅とふつうの餅を作って自分はふつうのものを食べ、兄には鉄の方を渡した。鉄餅を食べられず困っている兄の前にわざと着物の裾を開いた妹がすわると、下の口が兄の目に入った。それは何かと問う兄に、「上の口は餅、下の口は鬼を食べるのよ」と答えると、兄は驚いて崖から転げ落ち死んでしまった、というのが有名な鬼餅由来。鬼(厄)を払うありがたい餅なのだ。