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ハブ

執筆者:

写真:嘉納辰彦

ハブは世界で五指に入る猛毒のヘビだ。マムシと同じクサリヘビ科に属するが、マムシは北海道から九州まで。吐噶喇とから海峡を南に越えるとハブに置き代わる。ハブ属は東南アジアに広く分布。つまり、鹿児島県の吐噶喇海峡以南と沖縄県全域は、動物地理学でいうアジアの熱帯地域に入ることになる。一概にハブといっても南西諸島には4種類が分布する。すなわち宝島、小宝島にトカラハブが、奄美大島、徳之島、沖縄島などにハブが生息する。ヒメハブもハブと似た分布をする。八重山諸島にはサキシマハブが分布する。
 ハブの仲間は目と鼻の間に赤外線を感じる器官があり、獲物を捜し出す重要な武器になっている。そして、最大の武器である毒は上顎の奥にある毒腺で作られる高タンパク質である。毒腺はヒトでいう唾液腺が特殊化したもので、ひとたび獲物を嚙むと毒は注射針のような構造になっている毒牙を通して獲物の体に注入される。毒牙は口の先端の歯で、上側に1対ある。

積極的なハブ退治が行われる一方で開発がここまで進んでしまうと、通り一遍の旅行ではハブに出くわすことなど有り得ない。私のようにがっぷり嚙まれた人間は、むしろ幸運というものだ。ハブの危険性だけが強調されてきたが、基幹産業であるサトウキビやパイナップルを食い荒すネズミ退治へのハブの貢献は大きい。