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薬草

執筆者:

写真:垂見健吾

那覇の第一公設市場の建物にそって、露店の薬草売りが並んでいる一角がある。見ていると、なんだか楽しげで、かつ頼もしげでもある。ギンネム茶、くみすくちん茶、減糖茶、ウッチン茶など、名称もいろいろ、はては鼻療茶などというのもあって、とくにどこを治したいというのではないが、つい買ってしまったりする。

そういう茶の形態になっているもののほかに、ウッチン(ウコン)の根を乾燥させたもの、あるいはそれを粉末にしたもの、ビワの葉、フィラファグサ(オオバコ)、ハママーチ(カワラヨモギ)、ドクダミなど、さまざまな植物の葉や樹皮や根を乾燥させたものが山と積まれている。これらは煎じて飲まれるだけではない。ときには料理のスパイスとして用いられたりもする。

朝貢貿易・冊封使さっぽうしなどを通して、沖縄は中国と深いつながりがあるが、医食同源という中国ふうの考え方は、そのあらわれの一つといえるだろう。クスイムンという言葉があり、これはクスリとして食べるということだ。沖縄名物に山羊料理があるが、山羊を食べることを「ヒージャー・グスイ」する、というふうにいう。

薬草といっても、とくに薬効抜群の秘薬となる植物が沖縄の固有種としてあるのではない。ギンネム茶となると少し特殊かもしれないけれど、ウコン、オオバコ、ベニハナなどはすべて本土にもある。薬草を日常のクスリとして用いるならわしが営々として生きているということだろう。

沖縄市に住む知人の母親は、家族の体の具合が悪くなると、オオバコとかヨモギの葉を煎じて飲ませる、ときいた。老母は、散歩がてらに薬葉を摘んできて、干して常備しておく。年寄りのいる家では、そういうことがふつうに行なわれているのである。