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指笛ゆびぶえ

執筆者:

写真:嘉納辰彦

カチャーシーが始まると、その場にいるだれかがすかさず指笛を吹く。弾むリズムを煽る陽気な指笛は、ソバやウドンにかける七味唐辛子、あるいは沖縄そばに振りかけるコーレーグスのようなものか。いや、指笛はたんなる添え物ではなく、もっと本質的なものかもしれない。カチャーシーやエイサーをぐっと引き締める指笛は、なくてはならない沖縄の音だ。

指笛の巧い人はカッコイイ。で、その吹き方。まず、親指と人差し指で「OK」のサインを作る。その輪を口にはさむ。こらこら、輪を丸ごと口に入れてはいかんよ! 軽く、くわえる感じで。その際、くちびるをリラックスさせ、舌の位置もいろいろ工夫してみる。これで息を吹き出す。そのとき、空気の勢いを調節してメロディーをつける。たとえば、素早く上昇し、次にストンと低い音程に下がり、そこからまた高い音程にクイッと上がる。比較的ゆっくりした曲のときは、最後の上昇部分が優雅な弧を描くように、タメを充分にきかせるといいようだ。一方、速い曲のときは、ハネ上げるように軽やかに、歯切れよく上昇させる。

理屈はそうなんですよ。しかし、私はまだこの指笛ができない! もう、できる寸前のところまで来ているようなのだが、どうも最後の壁が突破できない。リズムはとれるのだが、ピーッと鳴らずにスーッと空気が漏れてしまうのだ。悔しい。
 口や舌の形態には個人差があって、指笛が得意な人もいればぜんぜんダメな人もいる。沖縄の人ならだれでも指笛が吹ける、なんていうことはない。しかし、これができると、沖縄民謡の本質に一歩近づけたような気分になる……かも。
 というわけで、練習あるのみ。ただし、勢いよく吹くとツバが飛び散ることがあるので気をつけて。ヨダレにも注意が必要。沖縄民謡の本質に近づくため(?)とはいえ、人前での練習はなるべく控えたほうがいいかな。

(2022年9月改訂)