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沖縄県公文書館

執筆者:

写真:嘉納辰彦

南風原はえばるの公文書館まで」というと、「?」とタクシー・ドライバーの反応は毎度のこと。「沖縄の赤瓦のきれいな新しい1建物よ」といえばすぐに通じる。
 県内の主な建造物中、納得できるデザインと内容・機能性のある数すくない公共建築と思う。県内観光もいいけれど、観光客はもとより、県民もじっくり腰をすえて歴史の資料とむかいあう時間が必要であろう。沖縄県民は他県にぬきんでる公文書館をもてたことを誇るべきだ。公けの資料のうらづけによって、一つずつ石を積むように確認作業をし、追体験するべき歴史を沖縄は背負っている。知恵をきたえるよき出会いがここには用意され、利用を待っている。フルに活用しないのは損というもの。

開館から3年あまり。琉球政府文書を中心に、米国立公文書館所蔵の沖縄関係資料(マイクロフィルム)は、ここのほか東京の国立国会図書館にあるのみ。公式文書あつめと整理はいまも進行している。
 入館料なし。かたい本だけではなく、アメリカが記録した戦後沖縄の写真もあり、紅型びんがたなど伝統工芸がらみの資料はビデオにもなっている。もちろん遊びにゆく場所ではないが、まじめに「知りたい」人のために、いい環境と貴重な資料がととのえられている。
 亡くなった岸秋正氏(夫人は岸朝子さん)が、エネルギーと財産をかたむけて買い求めた沖縄関係資料もすべて寄贈され、「岸秋正文庫」として公開されている。

沖縄県南風原町字新川148‐3休館日は月曜、祝日、年末年始、慰霊の日(6月23日)。午前9時から午後5時まで開館。電話098・888・3875  

【編集部注】

  1. この原稿が書かれた1998年当時。