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毛遊もーあし

執筆者:

恩納村の万座毛。万座毛の名前の由来は「万人を座らせるに足りる」野原。
写真:嘉納辰彦

毛とは原野のことで、夜、若い男女が原野に集まって、歌舞をして遊んだことをいう。アジマーアシビ(辻遊び)、ユーアシビ(夜遊び)という村もあったらしい。夜は時間を示すが、辻はその遊びをする場所をあらわす。辻とは、いくつかの村からの道が合流する場所、ひとつの村からいえば、そこから道が別れる場所であるから、いわば境界である。境界での遊びだから、村の秩序から自由であることができる。いうならば、若者たちが特権的に自由な男女交際を許された場所だった。こういう交際のなかから結婚にいたることが多かった。たいせつなのは、互いに大勢のなかから相手を選んでいることで、こういうつき合いから男、あるいは女について知っていった。つまり、恋愛が個人的な関係に閉じられていなかった。だから、結婚もうまくいった。古代日本の歌垣うたがきがそれに当たる。ただし、この毛遊びの事例は、ほとんどひとつの村の男女同士のもので、他村との交流はなかった。結婚が村の内部で行なわれていたことになる。