軽便鉄道
日本全国の都道府県で鉄道がないのは沖縄県だけである。
けれども、戦前の沖縄本島には那覇を中心にして3本の県営鉄道があった。与那原線、嘉手納線、糸満線で、総延長は46・8キロ。いずれも軌間(レールの間隔)が762ミリの狭軌の軽便鉄道で、小さな蒸気機関車が木造の客車を牽いて走った。昭和10年頃の時刻表によると、各線の運転本数は1日に10~14往復で、ガソリンカーもあった。若くして散った女学生たちも、この鉄道で通学した。
これらの鉄道は沖縄戦ですべて消滅した。わずかに橋の跡などを残すのみである。橋台には無数の弾痕がある。
往時を偲ぶものは写真しかないのだが、「軽便鉄道節」のレコードがあるのは嬉しい。
「軽便汽車乗てぃ まーかいが
那覇ぬ市ぐゎぬ 樽皮屋
買てぃ戻やい 砂糖代
だてーん儲きてぃ 家ふちゅん
シタイ! あひ小 ちばりよー
鳴ゆる汽笛ん アフィー! アフィー!」
砂糖を売買して儲けて家を建てよう、兄ちゃん頑張れよ、というのが大意であるが、沖縄民謡独特の音階が醸し出す哀調と鉄道にふさわしいリズム感とが重なり合って魅力ある鉄道唱歌になっている。以上が一番で、四番まであり、作詞は徳田安周氏、作曲は三田信一氏(RBCレコード)。
軽便鉄道が戦火で消滅してから半世紀を経て、現在、那覇空港から首里へのモノレール1が建設中2である。沖縄に鉄道が復活する日は近い。
【編集部注】
- 「ゆいレール」公式サイト:https://www.yui-rail.co.jp/
- 沖縄都市モノレール線「ゆいレール」は、2003年8月に那覇空港駅―首里駅間が開通。2019年10月には浦添市のてだこ浦西駅まで延長された。