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カステラカマボコ

執筆者:

写真:垂見健吾

首里しゅり出身のある人が、「どうも魚は苦手でね」というのを聞いて、意外に思ったことがあった。島育ちで魚嫌いとは。すでに70を越えているその人は、言葉をついで説明してくれた。「少年時代に食べた魚といえば、どれもこれも生ぐさくて、あれは腐る寸前の生ぐささだった。そのせいでしょうね」。
 冷蔵設備がなかった昔、魚の腐りが早かったのはヤマトも沖縄も変わらないが、沖縄のばあい、加えてあの暑さである。そして、なまじをしても追いつかなかったせいで塩干物というのがあまり発達しなかった。そのかわり、カマボコが非常に大切にされた。

ヤマトでもおおむねそうだけれど、沖縄ではハレの日の膳や重箱にカマボコは欠かせない。そのいちばんの贅沢版が卵を入れた「カステラカマボコ」である。材料である白身の魚も卵も昔は貴重なものだった。
 白身魚(グルクンが最高)の身をほぐし、臼や摺り鉢に入れてよくつき、よく摺る。といた卵を少しずつ注ぎながら、さらにじっくりと摺る。少量の塩を加えて摺る。またさらに砂糖、水を加えて摺りつづける。やがてほどよく弾力が出てくる。そこに溶いた片栗粉をまぜる。
 流し型に植物性の油をしき、ねりあがった右のものを入れ、蒸し器でとっくりと蒸す。40分ほどで出来上がり。昔は──といっても、ほんの30年ほど前(執筆時1998年)までは、カマボコもカステラカマボコも家庭でつくることが多かった。よく摺れば摺るほど、美味で日持ちのするものができた。今はだれもが1本900円ほど(1998年12月現在)1のカステラカマボコをお店で買う。

【編集部注】

  1. 2023年1月現在、カステラカマボコは1本1300円ほど。