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デイゴ

執筆者:

写真:嘉納辰彦

初めて沖縄に行き、僕が南にいることを実感したのは、体を刺すような強い光とホウオウボクとデイゴの木を見た時だった。ホウオウボクもデイゴも花をつける木だ。2つの木とも強烈に自分の存在をアピールし、それでいて強い光のもとで涼しげに咲いている。この2本の木を見た時、木も花をつけるんだと思った。それまでさんざん桜やコブシの花を見ていたにもかかわらず、そのぐらい僕には強烈だった。

僕は毎年のように八重山に足を運んでいる。そして八重山の中でいちばん多く時を過ごしているのが与那国よなぐに島である。与那国島には祖納そない久部良くぶら比川ひかわの3つの集落がある。比川から祖納に向かって集落を出ると、坂を上りきったところの真ん中に大きなデイゴの木がある。おもしろいことに、道はデイゴの木を避けるように2つに分かれ、先の方でまた1本の道になっている。幹にはでこぼこした大きなこぶがたくさんついていて、一度両手を広げて木に抱きついてみたことがあるが、ぼこぼこしたこぶが体の部分部分に当たり、奇妙な感じだったことをよく覚えている。
 年によっては1年間のうちに3、4回与那国島に足を運んでいるのに、不思議なことに僕はまだ比川の集落から出てすぐのところに生えているデイゴの花を見たことがない。