アカバナー
いいなあ、この呼び方。見た通りまったくそのまま、アカバナーはアカバナーさ、他にどんな言い方があるのかね、という率直かつ実直なウチナーンチュ(沖縄人)の声が聞こえてきそうだ。ちなみにアカバナーの和名は、ブッソウゲ(仏桑花)というのだそうで、こうなるとなにかいかめしく、しかも少しクライ。花の種類としては、ハイビスカスに属するもので、このブッソウゲという名にはそぐわない華やかさがある。
沖縄で見るアカバナーは、その青い空に映えて、実に美しく、堂々と誇りに満ちている。いってみれば、沖縄の県民性を表わしているような花なのだ。それだけに愛されているのであろう、生け垣にこの花を植えている家が多く、県下のいたるところで目にすることができる。
アカバナーといえば、思い出すのは知名定男の『赤花』(1978年発表)だ。私の叔父が好きで、彼の家へ行くとよくこの歌をかけていた。曲はいわゆる歌謡曲のようなもので、沖縄らしさはあまり感じられなかった。もともと民謡の人なのだが、変にポップスを意識した曲調になっていたのが、少し不満だった。当時沖縄では、そうしたポップス調の歌が流行っていたらしい。私にとって歌そのもののインパクトとしては弱かったのだが、叔父の奥さん(つまり叔母ですね)が沖縄の人で、知名さんとまんざら遠い関係でもなかったらしく、自分の知人のような気になってこの歌を聞いていた。
その知名定男が、ディスク・アカバナーというレーべルのプロデューサーとして、いいアルバムを制作している。ひとつは彼自身のCD『島うた』で、優美で繊細な島うたを生き生きと歌いあげている。ウチナー(沖縄)の生命力のようなものを感じさせてくれるいいアルバムだ。そして、彼のプロデュースしたネーネーズ1がまたいい。花がある歌い手たちだ。ディスク・アカバナーの名の通り、彼らもまた、沖縄を代表するアカバナーなのだ。
【編集部注】
- 1990年に知名定男がプロデュースした音楽グループで、最初のメンバーは、古謝美佐子、吉田康子、宮里奈美子、比屋根幸乃、當眞江里子。その後頻繁にメンバーは入れ替わっている。