さんぴん茶
暑い気候のせいもあり、昔から沖縄ではよくお茶を飲む。縁側などに大きな土瓶(チューカー)と黒砂糖が置かれている風景はどこでも見られた。そこで飲まれるお茶は、中国茶であり、中でもジャスミンの香りのするさんぴん茶(ばらさんぴんともいう)が好まれていた。さんぴん茶は中国の香片茶から来た呼び方で、茉莉花(ジャスミン)茶と同一のものである。
昔から香片茶、清明茶、烏竜茶などの中国茶が中国(主に福建省)や台湾から輸入され、今でも結構愛飲されている。香片茶は烏竜茶と同じ半発酵茶とされることが多いが、烏竜茶より発酵度が弱く微弱発酵茶といわれている。飲みやすい上、香りがよく、乾きを癒す作用もある。
さんぴん茶は日本茶のように最後の一滴まで切って飲むことはせず、常に茶葉が液に浸った状態にし、次から次へと湯を継ぎ足して何杯も飲む。沖縄の風習に、「一茶碗茶(チュチャワンジャー)」というのがある。出されたお茶一杯で辞意を表すと、「もう一杯飲んで行きなさい」と茶碗に茶が注がれる。「そんなに急がないであと一杯お茶を飲んでいるうちに、厄と出会わないで済むようになるよ」という心情から出た習わしである。ゆったりした長閑な時の感じられる風習だが、これも、何杯でも飲めるさんぴん茶ならではのものである。しかし、このような習慣もすたれつつある。今や街の自動販売機でさんぴん茶の缶が売られ、ゆっくり座ってお茶を飲むどころか、歩きながら茶を飲む時代となっている。