かにはんりる
いわゆる「ボケている」状態のこと。健康長寿の島というイメージがある沖縄だが、ボケる時は、しっかりボケる。「かに」とは、鋼のことだが、つまり精神の箍がはずれた精神状態だ。恍惚の人になっている年寄りを「かにはんりとぉーん」と、割と平気でいう。そこにはちょっとしたおかしみがあるのだ。そういうことをある程度許す、受け止める精神風土があるのだ。
僕が以前、大学の卒論の調査で祖母の住んでいる島に通っていた時のこと。村のいろんなお年寄りの方の話を聞いていたのだが、ある時なかなか話のかみ合わないおばあちゃんがいた。顔はニコニコしつつ、方言が激しくなり、言っていることはだんだん訳わかんなくなってたのだが、まぁなんとなく楽しいので、そのまま話し相手になった。
その夜、祖母に調査の話をしていたら、「えー、おまえは、あまのおばーとも話がしたか。意味はわかりよったか」とニヤニヤ聞いてきた。「あんまりわからんかった」というと、可笑しそうに「あのおばーは、かにはんりてぃいるのになー」と言う。その相手をした僕もまたかにはんりている仲間みたいで、なんかおかしかったのだが、そんな感じで村の中で疎外されているのではなく、変な話だが、ちょっとした楽しみとして「かにはんりてる」おばあの存在があるのだと思った。
したがって、普段でも、ちょっとしたボケをかました時には、「おまえ、若いのに、もうかにはんりているのかー」などと突っ込まれたりする。
自分も将来はかなりの確率で、かにはんりそうなので、今から十分に笑いを取れるよう備えて置きたいものである。