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イリオモテヤマネコ

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写真:沖縄県公文書館所蔵

西表いりおもて島だけに住む頭胴長約50センチ、尾長25センチ前後の小形の野生ネコで、世界に約40種あるネコの中で最も分布域が狭い種類である。数も少なく、せいぜい80から100頭程度と推定される。
 島民は古くからヤマネコがいることを知っており、行事の中にも話として登場したが、学問上の発見は1965年と新しい。島の山中から海岸まで広く活動しているが、山麓部で目撃されることが多い。基本的には夜行性で、夕方から夜間、朝方の比較的おそい時間まで活動している。島にいるほとんどの生き物を餌としているが、特に哺乳類ではクマネズミ、オオコウモリ、鳥類ではヒヨドリ、オオクイナ、爬虫類ではキシノウエトカゲ、アカマダラが最も多く、カマドウマ、マダラコオロギ、マダラゴキブリなども捕食の頻度が高い。

最も原始的だとか、珍奇だという話が先行してしまったため、ツシマヤマネコより有名になり研究も進んだ。しかし、特に古いという確かな特徴もなく、これは学問とマスコミは必ずしも同じ世界ではないと言うことだが、イリオモテヤマネコは同じアジアに住むベンガルヤマネコ、アジアゴールデンキャット、スナドリネコなどに近縁な種とみたほうが良いだろう。

これといった天敵もない西表島であったが、開発による生息域の減少と、特に野生化したイエネコ(野ネコ、野良ネコ)は彼らを絶滅に追いやりかねない脅威の存在である。