ぶちくん
とらわれてしまう言葉というのが時々あって、それは一種人生の呪縛言葉のようにしてじわじわとからみついてくる。ぼくにとってその言葉のひとつが「まふっくゎぶちくん」である。沖縄のあついあついあついあついあついとにかくあつい、えーいもうひとつおまけにあついあつい夏のまっぴるま、おりゃあんまりあついので気絶してぶったおれてしまったよ、という意味になるかしら。たぶん「まふっくゎ」が「とても暑いまっぴるま」。「ぶちくん」が「ひっくりかえる」という意味だろう。この言葉をはじめて聞いたときがまさしくぶちくんの日和であった。目の前で暑さにどでんとひっくりかえる人の姿を見るような、陽気でわかり易い衝撃があった。感動的な語彙といってもよい。こういう言葉を生みだし、使用しているこの国の人々がいっぺんに好きになった。まさしくぼくと沖縄をあつく結んでくれたびっくり言葉である。