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ヒハチ

執筆者:

写真:垂見健吾

沖縄そばの店で見かける、胡椒に似た香辛料。ピパーチ、ピパーツ、フィファチとも呼ばれ、標準和名はヒハツモドキ。コショウ科の植物。コーレーグース1と一緒に置いてあることが多い。胡椒ほど刺激臭はないが独特の香りがあり、なぜかそばに合う。他には、中味汁、ソーキ汁、ヒージャー汁などに入れたり、菓子のナントウミス(ナットゥンスーとも)の香りづけに使われたりする。普通は粉にして売られており、小さな卓上用胡椒瓶ほどの大きさで、400円2前後となかなか高価。

東南アジア原産のつる性植物だが、沖縄では野生化している。一度顔馴染みになると、あちらこちらで出会う。竹富たけとみ島の真白な昼下りに見かけたものや、大きなかぜ台風の直後の久高くだか島で目にしたものが特に印象的。

石垣を這い登り覆っていることが多く、つやつやした緑色の葉の間から、土筆つくしの頭を細長くしたような3~4センチの実がひょこんひょこんと立ち上がっている姿は、ユーモラス。熟すと鮮かな橙色になるが、香辛料用には緑のうちに摘み干し、炒って黒くなったものを粉にするという。干した葉や茎は、頭痛、腹痛、咳などの薬草として使用され、葉はテンプラにして食べることもある。

【編集部注】

  1. 『沖縄語辞典』にはコーレーグス
  2. この原稿が書かれた1998年当時