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シブイ

執筆者:

写真:垂見健吾

冬瓜の方言名なのだが、その名はおそらく「渋瓜(しぶうり)」からきたのであろう。見た目と違い味は上品で、沖縄ではよくソーキ汁などに利用される。

沖縄というのはだいたいが植物がパワフルなところなのだが、私が子どもの頃は、道端に生えた蔓がいつのまにか野原に勢力を広げ、黄色い花がきれいだなと思っているうちに、気がつくと巨大なシブイが転がったりしていた。スイカを盗みに行って、農家のおじさんに鎌で追われたワルガキたちも、その不発弾のような迫力と大きさと重さにだれも取ろうとはしなかった。戦争が終わった直後、巨大なシブイがあちこちになり、それで飢えを満たしただの、気持ち悪くて食べられなかっただの、といった話も、沖縄ではけっこう聞く。

そのふてぶてしいまでの存在感で、板の間でもコンクリートの上でも、転がっている姿がこれほど様になる野菜はない。しましまもなければでこぼこもない、いたってシンプルな形に濃い緑の肌と白い切り口のコントラスト。その横でおばぁがもやしの皮をむいているのを見かけたりすると、ソーキ汁(豚骨付きあばら肉の汁物)の中で金色にぷとぅぷとぅしているシブイの味を思い出し、夕飯にはハフハフ言いながら熱いシブイをほおばるウチナーンチュも多い。

最近は家族構成も変わったせいか、店に並んでいるのも小振りのものが多くなった。マチヤグヮーの軒下で、板敷きの売り台に横たわっていた大型の奴がなつかしい。